神藏美子監督の『続たまゆら』の一場面(右から原一男、末井昭、近田拓郎)

美子ちゃんと暮らすために家を出て

ぼくも美子ちゃんも結婚していたので、美子ちゃんと付き合うことはダブル不倫ということです。そのまま付き合うことも出来たかもしれませんが、美子ちゃんと一緒に暮らしたい一念で、ぼくは家を出る決心をしました。そのことも、それまでの自分からすると、かなり大それた思ってもみなかったことです。

離婚というのは結構大変なことです。家や貯金を妻に渡して、借金だけ背負って(少しだけお金を貰って)家を出たので、妻も何となく納得してくれて(ぼくは死んだことになっているようですが)、美子ちゃんと一緒に暮らすようになりました(詳しくは著書『結婚』を参照)。

美子ちゃんは女装写真を発展させ、女装したことがない文化人に女装してもらうというシリーズを『週刊宝石』で始めました(のちに『たまゆら』という写真集になりました)。このシリーズのヘアーメイクを担当したのは、女装メイクでは定評のある森田豊子さんで、その頃森田さんがいた大阪の女装サロン・パレットハウスに美子ちゃんに連れて行ってもらい、女装してみんなでカラオケに行ったこともあります。

女装した何人かと町を歩いていると、身長が一番高いぼくを見て、「デカいオカマやなぁ」と言っている声が聞こえてきたりします。普通はオヤジが町を歩いていても見向きもされませんから、何を言われても楽しくなります。