若年性認知症という甥からの言葉に愕然
2年半ほど前、時々届いていた妹からの手紙や、メールの返信が来なくなった。理由がわからず、何か自分では気づかないうちに妹を怒らせたのかと、思い切って電話をかけた。すると、妹はいつもと変わらない明るい声で近況を話す。狐につままれたような気分で電話を切るということが何度か続いた。妹の様子がおかしいと思いながら何もしなかったことが、今ではとても悔やまれる。
年が改まり、そろそろ今年の旅の予定を相談しようかと思っていた矢先、妹の長男から電話が来た。甥から電話なんて初めてだ。緊張しながら次の言葉を待った。
「伯母さん、今年は母さんと旅行に行く予定でしょ?」
「そうなの」
「実は昨日、母さんを連れて病院に行ってきたんだ」
その時まで私は、自分より若い妹が病気になるなんて考えもしなかった。しかし若くしてがんになる人もいるし、ケガということもある。……ほんの数秒、目まぐるしく思考した。
「どうしたの? 何かあったの?」
「少し前に、母さんの職場から電話があって、今年の契約更新は見送りたいって」
妹はずいぶん長い間、介護の仕事をしていた。経験から言っても更新を断られるような失敗をするとも思えない。職場環境がよいのでずっと働きたいと言っていたし、私は気が急いて何から聞いてよいかわからなくなった。
「母さんの仕事先の上司や父さんから話を聞いて、病院へ行ってきたんだ。いろいろ検査をして、先生から若年性認知症って言われた」