ギャンブル雑誌『一発逆転』(1993年1月号)

3億円の借金は一発逆転するしかない

50歳までのぼくはかなり滅茶苦茶で、特に後半の2〜3年は相当やさぐれていました。バブル時代、前期39歳から始めた商品先物取引を皮切りに、不動産投機や各種ギャンブルなどで、銀行から3億3000万ほど借金をしていました。不動産ローンがほとんどを占め、かなり高額だった給料も月々のローン返済に回ってしまい、手元にはいくらも残りません。自宅はありましたが、そのローンも2千万ぐらい残っていたと思います。会社の給料だけではどうにもならないので、ギャンブルで一発逆転するしかないと本気で思うようになりました。

余談ですが、パチンコ雑誌を編集する傍ら、パチンコ、麻雀、競輪、競馬、カジノなどを扱った『一発逆転』という総合ギャンブル雑誌を出していました。その雑誌を友達に見せたら、「最初っから負けているじゃない」と言うので、「何で?」と聞くと、「だって、負けているから一発逆転したいんでしょ」と言われました。一気に取り戻すことばかり考えていたから、発想がそうなってしまって、悲壮感さえ感じさせるタイトルになってしまったのです。ギャンブル雑誌なら『一攫千金』のほうが夢があります。

ギャンブルは、究極的には命を賭けてしまうものだと思っています。漫画『カイジ』のように、自分の命そのものを賭けたギャンブルをやれば、勝てば永遠の命を得たような大きな快感があるでしょう。しかし、負けたらそれでおしまいです。それでは身が持たないので、命の代わりに財産を賭けることになります。

最初はチビチビ賭けていても、それで収まらないのがギャンブルの魔力です。負けを一気に取り返そうと、「え〜い、一発逆転だ!」と、命を賭けることに近い全財産勝負に出てしまいます。勝てば生き返ったような快感がありますが、負けると魂が抜けたようになって、なかには自殺する人もいるかもしれません。それに近いようなことをぼくはしていたのでした。