商品先物取引で2千万は煙となって消えた

商品先物取引は8年ほど続けていたのですが、全然勝てないので一気に挽回しようと、理由がわからない値上がりを何日も続けていた粗糖に、2千万円の「売り」(下がったところで買い戻す)を入れました。ところがその後も上がり続けて、ついに持ちこたえられなくなって、投げ出さざるを得なくなりました。2千万円は、翌日先物屋の営業マンが「お詫びのしるしに」と言って持ってきたピースライト2カートンになり、煙となって消えてしまいました。

悔しいことに、ぼくが決済した次の日から粗糖は急落します。あと1日持ちこたえていたらとついつい考えてしまうのですが、ギャンブルで「たら・れば」は禁物なので、終わったことは考えないことにして、二度と先物取引はやらないと心に誓いました。

前期47歳ぐらいになると、バブル末期にローンで買ったマンションや土地の値段が半分近く値下がりしていました。値下がりしているのは知っていましたが、全額ローンで買っていたので、物件を売れば下がった分だけ借金が残ります。また上がるかもしれないという儚い望みで、売らないでローンを払い続けていました。

『雀王』という麻雀漫画誌も作っていたので、麻雀プロの方々とも知り合い、わりと高レートの麻雀もしていました。故・小島武夫プロから、褒められたのか馬鹿にされたのかわかりませんが、「末井さんは打たれ強い」と言われたことがありました。負けても負けてもやめようとしないからです。

朝まで麻雀をして、ボロボロに負けて、明けてゆく空を見ながらタクシーで家に帰ると、妻が心配そうに「そんなに無理したら病気になるよ」と言ってくれました。麻雀していたとは言えないので、「もうすぐ入稿が終わるから」と誤魔化して、ベッドに潜り込んでいました。

女性関係もいろいろあったので、家に帰れないことも度々ありました。それも全て仕事のせいにしていました。借金があることは妻も知っていましたが、心配すると思って金額は隠していました。ひとりで借金のことを考えていると、もすごく孤独な気持ちになりました。