いつも庭を眺めていた和子さん
和子さんは6年前から、我が家と近い所にある介護付き有料老人ホームに入っていて、コロナ禍になる前は美子ちゃんと一緒に時々会いに行ったり、我が家に昼食を食べに来てもらったりしていました。
和子さんが来ると、昼食の用意が出来るまで、お茶を飲みながら庭を眺めてもらうのが習慣でした。いつも「いい庭ねぇ」とか「光が綺麗ねぇ」と言って、いつまでも眺めていました。幅の狭い庭だけど、そう言ってもらうのが嬉しくて、和子さんが来る前の日は、いつも庭掃除をしていました。老人ホームではほとんど建物のなかにいるので、外に出て草木を眺めたりすることは楽しかったと思います。
ところが、昨年の8月、老人ホームで卓球している時に転んで、大腿骨を骨折してしまいました。卓球を見守っていた方に聞くと、その時はラリーが続いていて、落ちた球を自分で拾おうとして転んだそうです。多分、卓球が楽しくて、自分が90歳であることも、骨粗しょう症であることも、以前に大腿骨を骨折したことも忘れて、夢中で球を拾おうとしたのではないかと思います。
近くの総合病院で、骨折した大腿骨に金属を入れて補強する手術をし、数ヵ月後にはシルバーカーに掴まってゆっくり歩けるようになったのですが、外に出ることは少なくなり、我が家にもなかなか来てもらえなくなりました。