死の予習
病院で2ヵ月間の延命処置を断ったことは、未だに気になっていることですが、和子さんが体に管を付けられて、ベッドに縛り付けられるようにして2ヵ月生きたかったかどうかを思うと、それはなかったのではないかと思います。
後付けかもしれませんが、和子さんが卓球で転んで大腿骨を骨折した時から、和子さんの死は始まったように思います。和子さんがぼくらと散歩に出た時、10メートルほど歩いて「やめとくわ」と言ったことも、体力がなくなると好奇心もなくなって行くということを教えてもらったような気がします。
死の始まりは誰にでも来ることです。和子さんの死に立ち会って、死の予習をさせてもらったように思います。自分に死の始まりが訪れたら素直に受け入れ、欲を言えば、死ぬまでのことを観察できるぐらいの気力が残っていて欲しいと思います。
和子さんは91歳と3ヵ月で亡くなりました。良く生きたと思います。和子さんが我が家に運ばれて来た次の日、美子ちゃんがケーキ屋さんで「和子ちゃんおめでとう」と書いたケーキを作ってもらい、集まったみんなで食べました。
※次回配信は6月24日(木)の予定です