財産も名誉も、あの世には持っていかれない

歳を重ねれば、病気やけがも増えてくるでしょう。ネガティブとされることですが、私は、よい学習の機会だと思っています。

以前、骨折して約1ヵ月間入院することになりました。それまで大病をしてこなかった私は、このとき初めて体がお悪い方の気持ちを知ることができたように思います。体に不調のある方の立場に立ち、思いやりの心をいっそう深める。病気やけがという体験には、そんなプラスの面もあると気づきました。

さらに3年前には、心筋梗塞で手術をしまして。もしかしたら死にどきだったかもしれないのに、長生きさせられちゃったの(笑)。いざそのときを迎えて苦しむのは嫌だなと思いますけれど、「めでたく卒業」と納得いく死ばかりではありません。何ごとも天が与えてくださる宿題なのでしょう。

財産も名誉も、あの世には持っていかれない。携えられるのは、この世で身につけた「想いの習慣」だけなのです。人生の折々に起きる問題にも、すべて意味があると考える──。それが、私なりに身につけてきた後天的ポジティブ思考。残り時間が少なくなってきました今、さらにこの習慣を心がけようと思っております。

それでも心がざわつくときは、私は祖父・渋沢栄一が目指したように、世界の平和を祈ります。そうすると、ネガティブな思いが消えて、本来の自分を取り戻せますから。焦らず、もがかず、感謝の気持ちを忘れず、あるがままに。