私は自分のイメージにとらわれて役を選びたくないんです。だって人にはいろんな顔があるのだし、私に対してどういうイメージを抱くかは相手によっても違いますから。私は鏡で自分の正面しか見られないけれど、横や後ろの姿は、きっと私の知らない自分なのだと思います。
「中尾ミエに」とオファーがくるのは、その役が私に合うと判断してくださったということ。タイプが違うぶんだけおもしろい。だからどんな役にもチャレンジしたいのです。
少し前まで、高齢の女性を演じるときは、背中を丸めて老けた雰囲気を出さなきゃと思っていました。でもあるとき気づいたんです。私もすでに高齢だけど、背筋は伸びているし元気。世の中には元気なおばあさんがいっぱいいるから、へんに昔の年寄りっぽく演じないほうがリアルじゃないかと。シワも白髪も自前でいけるし、今は演じることがラクになりましたね。
役柄で濃い化粧をするとき以外は、仕事でもナチュラルメイクです。だってあまり作り込むと、化粧を落とすたびに、自分ががっかりしちゃうから(笑)。無理に若作りしたところで、本物の若い人にはかなわないですし。努力はするけど無理はしない。これも前向きに生きる秘訣ですね。