憂さ晴らしせよ、という神の思し召し

10年ほど前からは、ヨーロッパやアメリカでの公演にも足を運ぶようになったという。

「海外ツアーには10回くらい行っているかな。欧米人はノリがいいので本当に楽しめる。私も『ミック~』って絶叫したり、踊りまくったり。非現実的な世界へ紛れ込んだような感覚が癖になるんです」

海外遠征となると、さすがに気になるのが夫の反応だ。お金の問題もあるだろう。

「夫は何も言いません。というか、言えないんだと思います。私が海外遠征するようになったのは、10年前、夫の浮気が発覚したからなので。裏切られたことを知ったときは、相当落ち込みましたよ。自分でもビックリするくらい。

一瞬離婚も考えました。でも、夫を嫌いになったわけじゃない。だからこそ、本当につらかった。表面的には許したものの、なかったことにはできなくて。その当時は家事なんかやってらんない、と寝室に引きこもる日々でした」

そんなある日、ミユキさんは偶然に夫のヘソクリの入った通帳を発見する。キャッシュカードも一緒に保管されていて、暗証番号の見当もついていた。

「これは憂さ晴らしするために使いなさいという神の采配だと(笑)。800万円のうち、内緒で半分以上使ってしまいました。そのお金で海外ツアーに参加するようになって、ミックに会える機会が増えたら、徐々に前向きになったんです。本当に、ミック様々。

夫にバレたときのことを思うと怖いけれど、浮気の話を持ち出して自業自得だと言ってやるつもり。次はスコットランドでのコンサートを狙っています。コロナの収束が待ち遠しい」


ルポ・這い上がる力は、〈夢中〉がくれた
【1】子宮頸がんと告知された私を奮い立たせた、保護猫との出会い
【2】ミックは私の救世主。浮気した夫のヘソクリで海外ツアーへ
【3】60代で再就職に挑むも撃沈。古文書講座のおかげで新しいスタートを切れた