外見のミスマッチよりもっと深いところを
岩崎 実は私、声優としての仕事は、これがほぼはじめてで。
清水 えー、意外。岩崎さんって声の仕事が多いイメージだった。
岩崎 ナレーションの仕事は多いんですけど、映画に声優として出演するのは、これがデビュー作。
細田 僕は子どもと一緒に『おさるのジョージ』をリアルタイムで見てまして(笑)。語り手の岩崎さんの声が素晴らしくて、絶対にこの「中井さん」役にぴったりだと思ったんです。
清水 キャスティングの決め手は、やっぱり声ですか。
細田 中井さんの見た目は、なんというか、ギャルっぽい(笑)。観客はその先入観で作品を観ていくわけですけど、作品の後半で彼女の職業が明らかになる。そういう二面性を表すのに、岩崎さんの声がぴったりだと思ったんです。
清水 これまで私にくる役は、ガサツな中年女性ばかりで(笑)。だから「喜多さん」というデリケートな役どころはすごく意外で嬉しかったです。
細田 見た目の話で言うと、喜多さんはちょっとふっくらした女性。それをあえて清水さんにお願いするのが、我ながらいいんじゃないかと思ったんですよ。引き受けていただけてすごい自慢。(笑)
岩崎 監督は外見のミスマッチより、もっと深いところを見てらっしゃるんですね。
細田 そう、大事にしたのは「温かさ」でした。あの5人は、すずの亡くなった母親が所属していた合唱隊のメンバー。だからみんなすずのことを娘のように思ってるんだけど、なかでも一番ストレートにすずへの愛情を表現するのが喜多さんで。そういう、誰かを大事に思っている人ならではの温かさが、清水さんの面白さとすごくマッチするんじゃないかと勝手に思ったんです。
清水 疑似お母さん感だ。