毅然として〈歌わなかった〉オーディション

清水 それは、なにか大きな失敗をした経験があったとか?

岩崎 そういうわけじゃないんだけど……、私、三姉妹の末っ子なのね。真ん中の宏美が『スター誕生!』でデビューが決まったのを見て、ただお姉ちゃんのまねっこをしたくて16歳でこの業界に入っただけみたいなところがあって。だから、この歳になってもどこか甘いんですよ、きっと。

清水 自分に厳しい! そんなふうには見えなかったなあ。

細田 岩崎さんは、僕らにとって青春を彩る歌声の象徴なんですよ。明るい太陽みたいな。だからか、緊張とは結びつかなかった。

岩崎 あるミュージカルのオーディションで、「あなた、そんなに緊張して歌われたんじゃわからないから、もう一度歌って」って審査の方に言われたことがあるんですよ。でも、「いいえ、もう一度歌っても同じだと思います」って歌わなかった。(笑)

清水 あははは。その言い方! 毅然として弱い!(笑)

細田 面白いなあ、その話。人に勇気を与えるエピソードだと思いますよ。岩崎さんが毅然としすぎてる。

岩崎 そうなんですよね。もう威張って、「何度歌っても同じです!」って。

細田 でも、ちょっとわかってきた気がします。岩崎さんの歌声やキャラクター、変わらない明るさに励まされる僕みたいな人が多いから、そういう期待に応えなきゃいけないところがあるのかも。

岩崎 プレッシャーは、多少感じてるかもしれません。

細田 それって、大変なことだと思いますよ。

<後編につづく


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