細田「直接お伝えしないと、失礼な気がしますから」
清水 私たちのアフレコは、つい最近終えたばかりですけど、7月16日の公開まで1ヵ月半を切りましたよね。もう完成しましたか。
細田 あははは。そうですねぇ、いまの時点で65%かな。(笑)
岩崎・清水 えーっ?
岩崎 いまはどういう作業をしているところなんですか。
細田 まだ、動きのアニメーションをつくる段階で。この作品では、すずが住む自然豊かな高知の村、という現実世界と、超巨大インターネット空間の仮想世界〈U〉、この2つの世界を描くわけですけど、現実世界のほうは9割8分くらい終わったので安心してください。
清水 〈U〉がまだ描けていないということか……(笑)。公開日に間に合うものなんですか。それとも、これが普通なんですか。
細田 7月公開の作品だとさすがに6月には完パケ(完成し)てないといけないので、これでもちょっとは延ばしてもらってるんです。
清水 理由はやっぱり……、
細田 コロナの感染対策ですね。いつもだったら1週間で録るアフレコも、12日間かけて行いましたし。ほら、ブースがひとつひとつ区切られていたでしょう?
清水 アフレコの部屋まで人数制限すると、いちいち手間がかかるでしょうね。それなのに監督は毎回ブースのなかまできてくださって、感激しました。普通はマイクの向こうから、「もっと感情込めて! はい、もう1回!」みたいに言われるものなんですよ。全員に丸聞こえ。(笑)
岩崎 傍まできて、小声で「ここはすごくよかったと思います。とらえているところはいいんですよ」って言いながらね。恥をかかせないように。
清水 監督は人を傷つけたことないんだろうなあ、と思っちゃった。
細田 いやいや、まったくそんなことはない(笑)。ただただ、人物に命を吹き込んでくださる方々への敬意の表れです。直接お伝えしないと、失礼な気がしますから。