よく眠れない、体がだるいなど、夏は疲れを感じがち。原因のひとつに「睡眠の質の低下」があるようです。誰でもぐっすり眠る方法を専門医に聞きました。後編は、良い睡眠を手に入れるためのストレッチです。(構成=島田ゆかり イラスト=石川ともこ)

「若い頃はよく眠れたのに!」と感じる理由

睡眠中は、レム睡眠とノンレム睡眠を繰り返しているのをご存じでしょうか。レム睡眠は眠りが浅く、脳は活動している状態。ノンレム睡眠は体も脳も休息している状態です。これを交互に約90〜120分周期で繰り返しています。さらにノンレム睡眠は眠りの深さによって3つのレベルに分けられますが、中でももっとも深い眠りは「深睡眠」と呼ばれます。

一晩の眠りの約10〜20%がこの深睡眠にあたり、入眠後、約4時間で数回、このサイクルに入るのが一般的。深睡眠では脳がもっともリラックスした状態にあり、傷ついた細胞の修復を行う成長ホルモンを分泌し、脳の老廃物を排出して、さらに免疫力も高めているのです。

しかし残念ながら、50代になると深睡眠は睡眠全体の10%ほどに減少します。加齢や閉経などによっても睡眠が阻害されるからです。「若い頃はよく眠れたのに!」と感じるのは、深睡眠の時間が20%近くあったから。また、睡眠時間が短くなると、おのずと深睡眠の時間も減りますから、眠る時間の長さも重要。7時間前後は確保したいところです。

さらに、疲労を回復させるためには、一晩に2回は深睡眠があると望ましいのです。深睡眠を上手にとるには、「深部体温調節」がカギとなります。

深部体温は通常、朝目覚める頃から高くなり、昼間は高い温度をキープ。そして夕方にピークを迎え、そこから下がっていきます。大体36・5℃から37・5℃の間を推移しますが、眠りに入ると急激に低下。

これは深睡眠に入るための正常なパターンです。ところが生活習慣の乱れやブルーライトの影響、運動不足などで深部体温の高低差がない場合、眠りにつきにくく、深睡眠までたどりつけません。だからこそ、眠る前に深部体温を上げておくことが重要なのです。温度はいったん上がれば、自然に下がっていきます。