「幸せな苦しさ」を味わった照ノ富士
驚くべきは照ノ富士だ。綱取りの緊張感ゼロの自分発揮の相撲だ。どんなかたちで相手に攻められようと、落ち着いている。
困ったのが正代で、白鵬に2度もひっぱたかれたうえに、まだ7勝だ。千秋楽で関脇・高安(高ははしごだか)に勝たないとカド番になってしまう。その高安もぎっくり腰で2日休んだのでまだ7勝。負け越すと大関復帰への夢も繋げなくなる。正代と高安は人柄がよさそうなので、二人とも幸せになってほしい。
正代も高安も勝てなかったが、照ノ富士と攻防を見せたのはさすがだ。照ノ富士は馬力があるから、対戦相手は技と策がないと、「すいません。顔を見せにきただけですから、すぐ土俵を出ますね」という感じで、一気に土俵の外にもっていかれる。
14日目の正面解説の尾車親方(元琴風)が、綱取りでも落ち着いている照ノ富士について、
「幸せな苦しさ」と話していた。これまでの照ノ富士の苦しい経験からしたら、綱取りの重圧はたいしたことではないということである。
白鵬の奇妙な相撲によって、照ノ富士の優勝を願う人は一気に増えたことだろう。
横綱になろうという力士に対し、先輩横綱は大相撲の醍醐味を伝える力と技の美で対応してほしい。
そうでないと相撲ファンは怒っちゃうぞ。