オーナーさんに愛された家
「わたしはね…」
「はい」
「手放したくないんですよ」
「え?」
「手放したくない」
「……」
「……もし買っていただけるなら」
「はい」
「遊びにきてもいいですか?」
「もちろんです」
「いや〜でも、寂しいなぁ」
「はい〜」
「気に入ってくださって嬉しいですよ、私が住みたいんだから」
オーナーさんは、売りたいんだか売りたくないんだか、
自分でもわからなくて混乱しながら部屋に対する愛情を語ってくれた。
私は、こんなにオーナーさんに愛されたおうちなんだと思って、絶対に買うと決めた。
不動産屋さんに「買いたいです」と伝え、そこからは、怒涛の忙しさだった。
まずはお金を借りなくてはならなくて、銀行さんにお願いした。
しかし、ほとんどの銀行さんが貸してくれなかった。
これで貸していただけなかったら買えない!とハラハラしたが、
どうにか貸してくださる銀行さんが見つかった。
11月に購入し、年内には引越し希望だった。
超特急でリノベーションをすることになった。2LDKを1LDKに替えて、
私の一人暮らしのLDKに、娘の部屋がついている、というイメージにした。