どんちゃん騒ぎで送ってほしい

加藤 葬儀の希望はあるの? このごろは著名な方でも、本人の希望でお葬式を身内だけですませ、死後に発表されることも多くなったわね。

渡辺 先日、私が以前主宰していた演劇塾の生徒だった女性が亡くなったんです。後になってわかったのですが、彼女は末期がんを患ってから、身の回りのことをぜんぶ整理していた。最後に行きたかった京都の天橋立を訪れて、近くの公園で力尽きたんです。お通夜に告別式、お別れ会もいっさいなし。本人の希望ならば仕方ないけれど、残されたほうは別れを言う機会がなくてつらいな、とつい考えてしまって。複雑な気持ちになりました。

加藤 そうね。潔い去り際ともいえるけれど……。

渡辺 コロナ禍で仕方ない面もあるのですが、この1年、親しかった人たちの葬儀やお通夜がなかった。でも、故人の思い出を語って共有する場って、必要だと思うんです。私のときは、葬儀の形はともかく、盛大な飲み会を開いてほしい。どんちゃん騒ぎの中、みんなに笑顔で送ってもらいたいなあと。

加藤 私は、外国の地でひとり、旅の果てに人生を終えることにちょっと憧れてる。でも、旅先で航空券やホテルの手配をし続ける必要があるでしょう。そんな元気があったら、すぐには死ねないわよね。(笑)

渡辺 そうですよ!

加藤 娘たちから、「ママのお葬式は大事業になりそうだから、いっそ生前葬をしたら?」と言われたこともあるのよ。でも、私は死ぬ直前までステージに立って歌うつもり。毎回のコンサートが〈生前葬〉みたいなものなんです。

渡辺 私にとっては舞台ですね。ステージで最期を迎えられたら本望だけど、それはそれでスタッフやお客様が大変……。それより、まずは家の片づけですかねえ。

加藤 気長にやっていけば大丈夫よ。最近は片づけでも財産管理でも便利なサービスが出てきているし、一度利用してみたら?

渡辺 お願いしてみよう。先輩を見習って、少しずつ、自分の人生を整理していけるように頑張ります。