「いつも二人で情報や気持ちを共有していたことで、前に進んでいるんだと信じられたような気がする」(妻)

二度の流産で心が折れかけて

 治療を進めた結果、病院から妊娠しましたという知らせがあって。

 そうなのだけれど、同時に先生は「妊娠はしていますが、神のみぞ知るです」ともおっしゃったから、どういうことだろうと戸惑ったのよね。

 そして、着床後の血液検査では、上がっていくべき数値が上がっていないことがわかった。

 「7週の壁」というものがあることを知ったね。妊娠7週で数値が達していなかったため、「不育」の診断が下って……。

 諦めるしかなかった。

 流産手術は麻酔で意識も痛みもなかったけれど、それまで受けたどの検査よりも精神的につらかった。

 そうだったね。先生は、不育になった原因を調べながら次に進みましょうとおっしゃって、検査項目も増えていった。

 たくさん検査をしたなかで、免疫学上の検査項目に引っかかって。注射を打つ治療を受けたよね。

 妊娠したとしても、それが順調に育つかどうかは、「卵の力」がすべてと先生がおっしゃったのが印象に残っているな。

 2回目に妊娠反応が見られた時は、赤ちゃんの心臓になる組織がないという、つらい事実を突きつけられて……。診断書に書かれた「emp-ty(空)」という文字を今でも覚えてる。この時は、不妊治療はしばらく休みたいとまで思ってしまった。でも、生理が来るたびにまたチョコレート嚢胞が大きくなるから、治療は早く進めたほうがいいと先生がおっしゃって。

 もし僕が同じ立場だったら、心が折れていたかもしれないな。

 いつも二人で情報や気持ちを共有していたことで、前に進んでいるんだと信じられたような気がする。3回目は受精卵が着床しなかったけど、この頃には、妊娠はそんなに簡単にできるものではないし、不妊治療というのは時間がかかるんだと覚悟をしていたな。

 僕にできることといえば、受診の後、一緒においしいものを食べに行くくらいだったけど。

 あれは嬉しかった! 仕事を続けながらの治療だったから、休みの日はすべて通院だったけど、お昼にお寿司、おやつにラーメンなんてこともあったね。(笑)