「不妊治療と妊娠・出産を経て、夫婦の絆は確実に強まったと思う」(妻)

2ヵ月以上つわりに苦しんで

 4回目、無事着床して順調に育っていると聞いても、「まだまだ気が抜けない」と緊張していたね。

 心拍を聞くまでは安心できないと思っていた。そして、数値的にもう大丈夫と診断が出た5週でつわりが始まって──。

 冷蔵庫を開けられないくらいひどかったね。漢字で「悪阻」と書く理由がわかったよ。食べられるものがほとんどなくて、僕が素麺をゆでたり、果物を小さくカットして、夜中でもすぐ食べられるようにしたり。

 小さな塩むすびをたくさん作ってくれたよね。温かいお米は全然受けつけず食べられなかったんだけど、ありがたかった。

 吐いている時も、背中をさするくらいのことしかできなくて。

 でも「手当て」という言葉があるように、手を当ててくれるだけで楽になる。私がトイレに立つ時は必ず起きてつきそってくれたから、だいぶ寝不足になったんじゃない?

 いやいや。

 14週までそんな状態が続いたから、私はかなり痩せちゃったよね。それからようやく、ベビー用品店に出かけて買い物をして。ネットで調べながらオロオロしたわ。

 ベビーカーは僕が選んだ。

 お互いの親に妊娠を報告したのは、心拍が聞こえてからだったよね。

 不妊治療をしていることを伝えると期待が高まるだろうし、がっかりさせることもある。二人で相談して、言わないでおくことに決めたね。僕の母や、あなたの両親も、言葉に出さずとも孫を心待ちにしていることは伝わってきたから、報告ができてよかった。