60万人以上いるとされる中高年のひきこもり。「親の正論」が最悪の結末を招くことも?(写真提供:写真AC)
ひきこもり状態にある40〜64歳の中高年は全国で60万人以上いると推計され、「80」代の親が「50」代の子どもの生活を支える「8050問題」という言葉もよく聞くようになりました。一方、ひきこもった本人やその家族と接してきた精神科医の最上悠先生によれば、年を取れば取るほど克服するチャンスが失われて深刻化する可能性があると言います。またその原因はさまざまでも「背景」には共通する点があるそうで――。

「原因」はそれぞれでも「背景」には共通する点が

ひきこもり自体は医学的に正式な病名ではなく、状態を指す言葉であり、社会的ひきこもりとも呼ばれます。しかし、さまざまな精神疾患が関係していることも少なくないうえ、そもそもひきこもり自体は決して健康的なことではなく、私自身は精神疾患の生まれる背景と共通する部分も多いと思っています。

では、子どもはどんなことが原因で自立に向かうことから目を背ける(心理的ひきこもり)ようになり、ときには社会的ひきこもりにまで至るのでしょうか。

ひきこもりのきっかけや原因は人それぞれで多様なのですが、背景には共通する点もあるように思います。

それについて述べるのは、精神科医である私としては非常に勇気が要るのですが、日頃診療に当たってきた患者さんたちのケースを見ると、ひきこもりや問題行動など、子どもの心の行き詰まりの背景には、深刻なケースやこじらせているケースほど、親との確執や葛藤を抱えていることが少なくないという印象を抱かざるを得ません。

病名はさまざまであっても、長くひきこもり生活などに苦しむ患者さんたちに、初診時に私が、「心の行き詰まりは、本音の感情を押し殺し続けた結果生じてくる現象とも考えられています。あなたも小さい頃からこれまでずっと、自分の心を殺して我慢してきたのではないでしょうか?」と聞くと、ほぼ大半のかたがいきなり目を真っ赤にし、なかには涙が止まらないかたもいるほどです。