「自分の体をなおざりにしていたことを後悔しています。具合が悪ければ大事をとって休むのも仕事のうちだったのに、専門医に診てもらうことが先決だったのに、と。」

 

でも単に楽観的だったわけではなく、大丈夫でなきゃ困る、だから大丈夫だと言い聞かせて乗り切るという、いわば根性が培われていたということなのです。タカラジェンヌは一様に強い精神力を備えていますが、私たちの時代は特に、風邪をひいたくらいでお稽古を休むなんてありえないという風潮でしたし、骨折しても休む理由にはならなかった。

私にしても、共演者に迷惑をかけられないという思いが先立って、自分の体のことは二の次三の次にしていました。でも自分の体のことは自分にしかわからないのだし、自分しか守ることができません。第一、根性で一時しのぎをしたとしても、結果的に倒れてしまえば本末転倒になってしまう。

自分の体をなおざりにしていたことを後悔しています。具合が悪ければ大事をとって休むのも仕事のうちだったのに、専門医に診てもらうことが先決だったのに、と。

 

約10年間入退院を繰り返して

緊急入院した時のことはほとんど覚えていません。一命はとりとめたものの、50代から60代にかけての約10年間は入退院を繰り返していました。今でこそ大学病院には「膠原病科」がありますが、私が発症した20年前は医師たちが手探りで治療していた時代。ステロイドとインターフェロンを併用するという、今ではありえない治療法しか術がなく、それに伴う激しい副作用に苦しみました。

味覚障害、幻覚、幻聴に襲われ、思考回路が破壊されたような感覚で、1+1が計算できず、言語に対する理解力も低下。挙句の果てにうつになり、「死ななくちゃいけないんだ」「死ねば楽になれる」という観念にとりつかれて、3度も自殺未遂事件を起こし……。そうこうしているうちに特効薬ができて救われました。医学の進歩というのはありがたいものです。