漫画家・秋元治が目黒の親戚を「東京のおばさん」と呼んだワケ

単行本が200巻を数えてギネスブックにも載った漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所(略称・こち亀)』の作者で、1952年に亀有で生まれた秋本治は、映画監督の山田洋次との対談で、子どものころ、目黒に住んでいる親戚のおばさんのことを「東京のおばさん」と呼んでいたと回想している。

なぜ目黒の親戚を「東京のおばさん」と呼んだのか(写真提供:写真AC)

葛飾区民は、戦後になっても自分の住む場所を東京と考えていなかったのである。

これを受けて山田は、自身の作品『男はつらいよ』について、その舞台となった柴又は「『下町』と言っても『故郷』と言っても通用してしまう」から、舞台にちょうどいいと考えたのだと語っている(秋本治『両さんと歩く下町』)。

このように高度経済成長が始まったころ、人々が「下町」「山の手」と考えていた地域の範囲は、今日に比べるとずいぶん狭かったのである。

※本稿は、『東京23区×格差と階級』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。


『東京23区×格差と階級』(著:橋本健二/中公新書ラクレ)

東京は、世界的にみて、もっとも豊かな人々と、もっとも貧しい人々が住む「階級都市」だ。そんな23区の姿を、格差に関するさまざまなデータをもとに詳細に分析する。