バーベルに抱きつき「ありがとう」
その次のリオ五輪までは、ケガが多くなり何度も諦めそうになったけど、もう一度表彰台からの景色が見たい一心でした。リオの銅メダルは今考えれば奇跡としか言いようがありません。
スナッチで挙がるはずの81kgに2度失敗し、後がない3本目でクリア。その時点で8位です。ジャークの1本目では105kgを挙げて4位になっていましたが、107kgを挙げればメダル確定だったところを2本目で失敗。渾身の力を振り絞った最後の3本目で成功し、大逆転劇で銅メダルを獲得しました。
ロンドンからリオまでの4年間があまりにも苦しかったので、思わずバーベルに抱きつき「ありがとう」と声をかけたんです。
バーベルにはよく声をかけますね。相手は鉄ですけど(笑)。軽く感じさせてね、とか、頭上に挙がってね、とか。バーベルは長年の相棒ですからね。
そして、東京に向かうまではリオ前以上に苦しかった。リオの時も満足のいく練習ができていなくて不安だったけど、故障もあり、東京まではその半分もこなせていませんでした。さらにコロナ禍によって大会が延期に。緊張の糸が切れてしまい、落ち込みました。一つ年齢を重ねてしまう、その怖さも感じた。そんな時、父が「一日一日、できることをやっていこう」と励ましてくれたんです。
緊急事態宣言下の自粛期間中、21年ぶりに実家の居間で練習をしました。競技を始めた場所でもありますし、家族と過ごすことで原点に戻れた。そして、延期の1年をボーナスタイムだと前向きにとらえられるようになったんです。今では、もう1年あってもよかったな、と思えるくらい。(笑)