TikiTokでおすすめ本を紹介しているけんご@小説紹介さん。彼の投稿がきっかけで重版が決まった書籍も多い。(撮影:本社写真部)
「彼が紹介する小説は、重版になる」――10代、20代に人気のSNS・TikTokで日々小説を紹介するけんご@小説紹介さん。彼が起こしたムーブメントに出版業界全体が注目している。「小説に限らず、商品を薦めるにはTikTokが一番適したSNSだと感じています」と語るけんごさんが、小説を紹介し続ける理由とは(取材・文=婦人公論編集部、撮影=本社写真部)

〈若者の活字離れ〉は間違っている

「〈若者の活字離れ〉とよく言われていますが、僕は間違っていると思っています。映画にしろ、漫画にしろ、アニメにしろ、世界にはエンタメが溢れているじゃないですか。その中で一番きっかけが少ないのが小説。言い換えれば、現状他のエンタメにアプローチの仕方で負けているということ。きっかけさえであれば、若者も読んでくれる。僕はそのきっかけ作りがしたいんです」

と語るのは、話題のTikTokerけんごさん(23歳)だ。「彼が紹介する小説は、重版になる」と、今、書店・出版社から熱い視線を浴びている。

TSUTAYA三軒茶屋店の豊田一弘さんは

「最初は、なぜこの本が今売れているのかな? とわからなかったんです。それで調べたら、けんごさんが紹介したことがきっかけだとわかりました。文芸作品の売れ方としては、前例がない反響と言っていい。テレビで紹介されるよりも早く読者が反応している印象です」

と語る。

「TikTok」は、スマートフォンでショートムービーを気軽に投稿できる動画SNS。2016年に中国のByteDance(バイトダンス)社がサービスを開始してからというもの、世界中で着々とユーザー数を増やし、さらにコロナ禍の自粛生活が追い風となって、2021年7月にはFacebookアプリ以外では初めて、全世界で30億ダウンロードを達成した。9月27日のTikTokの公式ブログ記事によれば、現在月間のアクティブユーザーは10億人を超えているという。まさに世界人口の7、8人に1人が利用するプラットフォームへと成長している。