「僕も最初は『小説は難しいもの』だと思っている側の人間でした。でもそうじゃないんだよ、と伝えていきたい」(けんごさん)

「小説って難しいイメージがあったけど」

けんごさんの動画を眺めていると、本の紹介というより、映画の予告編のようだ。ひと作品ひと作品力を入れて作っていて、脚本を作る時間はたっぷりとっているという。さらに、薦める言葉の選定にはアカウント開設当初からのブレないユーザー目線がある。

「僕は動画を作る際には、小説を知らない人向けに作っています。小説が好きな人からすると、筒井康隆さんは本当に神様のような作家ですし、東野圭吾さんもミリオンセラーを出している作家です。でも、知らない人からすれば知らないこと。この小説、超有名で、100万部突破していて、という情報は全く必要なくて、小説の良さをどうしたら伝えられるかを考えて紹介しています」

その伝える力には、本を紹介してきたプロの書店員も舌を巻く。

「最初は、そんなに短い動画でどうやって紹介しているんだ、と思いました。実際に見てうまいなーと。「伝える」「知ってもらう」事への可能性はまだまだあるんだと実感しています!」(前出のTSUTAYA三軒茶屋店 豊田さん)

けんごさんは、何度もフォロワーに、「ぜひ書店さんに足を運んで」と呼び掛けている。結果として、今までに書店に来なかった若年層が現れ、書店も活気づいているという。

TikTokのアカウントを開設してほぼ1年。今も動画に作り続ける原動力となっているのは、やはり読者からの反応だ。

「『小説って難しいイメージがあったけれど、読んでみたら全然そんなことなかった』とか、『小説の虜になりました』とか、さらに『小説家目指したいです』とか。ユーザーの反響を聞くのは一番励みになりますね。僕も最初は『小説は難しいもの』だと思っている側の人間でした。でもそうじゃないんだよ、と伝えていきたい」

23歳が起こしたムーブメントはどこまでいくのか。出版業界全体が注目している。