伊藤 相手を過剰に頼らせちゃうのよ。あたしのこともこんなに頼らせてくれる。今気がついたけど、歴代のダメ男と同じ立ち位置じゃん、あたし。40歳で、アメリカで末っ子のトメを産んだ。産んだ翌日にアメリカに来てくれたね。
枝元 そうそう。前から行く予定だったのがお産が早まって。あの頃はわたしもいろいろと……。
伊藤 そうそう、いろいろ揺らいでたよね。でもあのとき作ってくれたあずき、めっちゃウマかった。
枝元 着いて、すぐ健康食品店であずき買って来て煮たの。タピオカとココナツミルク入りで。
伊藤 あの味は一生忘れない。産後の身に染みたなあ。トメは今でも人にねこちゃんのことを「私のゴッドマザー」って紹介してるのよ。次の段階が介護だったね。あたしが少し早くて、先にバタバタしはじめた。
枝元 うちはまず弟が亡くなって、それから父が要介護に。でも先に亡くなったのは母で、父ひとりになって。ひろみちゃんにいろんなこと教わったね。
伊藤 ねこちゃんはあの頃、介護で大変だったと思うの。でも愚痴こぼすより、お父さんのことほんとに楽しそうに話してくれる。無理してるんじゃなくて。それがよかったな。親と子の本質を見たと思って、父のことも思い出して、なんかすごく沁みた。海ほたるに行ったこととかさー。
枝元 あれは母が亡くなったときなんだよ。「なんでおかあさんは寝てるんだ」って父が言ってるから帰れなくて、それで海ほたるに行って、コンビニでスープとおむすび食べたんだ。ひろみちゃんも言ってたけどさ、お父さんが「待ってる時間が長い」って言ったこととか、記憶の中にどうしようもなく残る。ああ、あそこにいたなあって思い出す。いとおしいといってもいいくらいな感じで。わたし今、車いす押して散歩に行きたくてしょうがないよ。