伊藤比呂美さん(左)と枝元なほみさん(右)(撮影:大河内禎)
熊本とアメリカに軸足を置き、子育てや介護、仕事に飛び回ってきた詩人は、東京に来るといつも、親友の料理研究家宅に宿泊する。伊藤比呂美、枝元なほみ、ふたりは同い年。「ねこちゃん」「ひろみちゃん」、呼び方も40年、変わらない。後編は、最近の二人の関係から――(構成=田中有 撮影=大河内禎)

<前編よりつづく

語り尽くす居候と聞き上手の家主

伊藤 3年前、早稲田大学で教えることになったとき、犬連れでどうするか考えた。東京に部屋を借りることも考えたけど、そうすると大学に行ってる間は犬は閉じ込められっぱなしだし、あたしも直帰しなくちゃいけないし。結局、熊本から通うことに決めた。

枝元 ひろみちゃんに「毎週泊めてくれる?」って聞かれて、もちろんどうぞと。

伊藤 コロナ禍になるまでの2年間は、週末は熊本にいて、週の半分はここに来ていた。でも朝早くに出て、帰りは夜遅いから、あんまり顔を合わせなかったね。

枝元 簡易ベッドもあるんだけど、ひろみちゃんは結局、リビングのソファでいつも寝てんの。

伊藤 あの頃は、大学から帰って学生の話ができるのがすごく楽しかった。ねこちゃん、熱心に聞いてくれるの。学生の詩を読んでくれたし、学生の芝居を一緒に見に行ってくれたし。あたしは学生たちに夢中だったから、その経験をシェアできたっていう感じ。

枝元 ひろみちゃんは本当に面倒見がいい。ちっともそうは見えないんだけど(笑)。犬も猫も、植物も、学生も、もちろん自分の子どもも。何かの面倒をみる資質が本質的に備わってるんだと思う。

伊藤 ここのところ、野犬の仔犬まで来てめっちゃ増えた。