枝元 食の仕事って世の中の動きと切り離せないものかもなあと思うようになってきた。ひろみちゃんはどう? 一時期は「トランプバカよ」が挨拶がわりだったね。
伊藤 だってバカだもん。ねこちゃんの活動、すごいなえらいなと思って見てるよ。あたしは「わたし」を書くことで「わたしたち」になる、社会の問題や現象につながるという意識はあるんだけど、ねこちゃんみたいな活動はできない。でもねこちゃんは、あたしのそういう部分を放っておいてくれる。
枝元 わたし議論するっていうのが苦手なんだよ。考えが同じじゃなきゃなんていうのもない。そんなことしなくても、ひろみちゃんのことはよくわかってるんだし。
伊藤 あたしのことは放っておいてくれるけど、仕事だとときどきケンカしてるよねー。(笑)
枝元 だってクソなときだってあるよ。受け入れ難い齟齬があったりして、カチンとくる。もう還暦を過ぎたことだし、どうにもやってられないなら、仕事、降りてもいいと思う。
伊藤 アハハ、還暦すぎて5年もたってるよ。あたしらはバブルですごく本が売れた時代も知ってるし、そのあとの落ち込みだって生き延びた。仕事の内容は変わっていくかもしれないけど、楽しいよね、今。好きなことができて。
枝元 そうだね。ひろみちゃんの本はいつ読んでもおもしろいよ。
伊藤 本を出すと必ず読んでくれて、しかもあたしが一番力を込めたところをすくいあげて、あたしが一番言ってほしい感想を、ねこちゃんはビシッと言ってくれる。
枝元 あらー、そうなのか。
伊藤 料理で言うと、どこで外食するよりもここで作ってもらうものがうまいしね。あたしたちは、お互いの分野の仕事をリスペクトしてるってのはある。
枝元 男に出すならイチから作るかもだけど(笑)、撮影の残り物を「残しておいたよー」って出せるのは、女友達だから。
伊藤 一時コロナで遠慮してホテルに泊まったりしてたけど、最近また泊まりに来ちゃう。で、病人なのにごはん作らせて……。
枝元 わたしが死んだらお経をあげてくれるんでしょ。ひろみちゃんが訳した般若心経。だから一応、先に死ぬ用意もしておくよ。
伊藤 お経の朗読ならいつでもやりますよ(笑)。でもこの調子だったら案外、大丈夫なんじゃないかって気がする。取りあえず来月も、また泊めてもらうね。