肉とトロばかり狙う義妹

ある日、夫の実家ですき焼きの鍋を囲んでいた。すると義妹は、目を爛々と光らせて肉ばかりを狙っている。少しでも高い食材をとらなければ、損をするとでもいうように。今どきは、義父母のほうが嫁に気を使うというが、わが家でも例外ではない。義理の両親は、豆腐とネギと糸こんにゃくばかり。

そういえば以前、手巻き寿司をしたときも、義妹がトロばかり取るので、義父母はかっぱ巻きを食べていた。さらに義妹は、食後に出された個包装のクッキーや饅頭を平然と自分のカバンに押し込み、菓子盆をからにする。これは毎度のことなので、もはや誰も驚かない。

幼い頃、祖母に連れられて親戚の家へ行ったとき、私も同じようにしたことがある。出されたチョコレートがあまりにおいしく、祖母とその家の主の目を盗み、ポケットに詰め込めるだけ詰め込んだのだ。そして帰りがけ、それがポケットからこぼれて大変気まずい思いをした。親戚のおばさんは笑って、許すどころか余計にお菓子をくれる。しかし祖母は、その場では何も言わなかったが、帰り道に私を厳しくった。

「朋子。チョコレートを得た代わりに、何を失ったかわかりますか」。そして「タダより高いものはない」とも言った。出されたものはその場で楽しむものであり、持ち帰るのがいかに卑しいことか、と。

私の地域には「食わさんとく」という方言がある。これは、家で十分に食べさせないため、よそでガツガツする子どものことを指す。義妹こそ、「食わさんとく」ではないか。