「普通になりたい」という望みが、ときに自分を見失わせてしまう(写真提供:写真AC)
発達障害・ADHDの診断・治療の専門家である加藤俊徳脳内科医。1万人以上の脳を診断してきた先生のもとには「いつも周りの顔色を気にしてしまい、結果、損ばかりしている」という悩みが多く届くそうです。そこには頭の中できちんと自分の感情を言語化できているかどうかが関係しているのと同時に、「<普通であること>への強い憧れ」が影響を及ぼしているケースもよくあるそうで――。

浮上する「自分の気持ちが分からない」という悩み

私は長いあいだ脳の研究をしてきて、いろんな人にお会いしてきました。そのなかで、次のようなお悩みを聞くことがよくあります。

「自分の適職がわからなくて、転職ばかりしています。何が向いているのか教えてください」

「そろそろ結婚したいのですが、好きな人どころか友達もいないです。何がいけないんでしょうか」

「最近、管理職になったのですが、自分勝手な部下に厳しい態度をとれません。厳しくするってどうやればいいんでしょうか」

「人付き合いがすごく疲れます。嫌われているわけではないのですが……」

こうした相談にいらっしゃるのは、30代以上の方々が比較的多いです。

若いときは経験の浅さからあまり気にならなかったことが、年齢を重ねるうちに悩みとして浮上してきたり、立場の変化によって突然悩みが生じたりするのです。これらは一見バラバラの悩みのように見えますが、根本的な原因は共通しています。

その原因とは、「自分の気持ちや感情が自分でわかっていない」ということです。自分がどうしたいのかわからないから、適切な行動に結びつかないのです。