「普通であること」への強い憧れ
自分の感情がよくわからない人には、「普通であること」に対する憧れが強い人も多いです。上手に会話したり、集団行動になじんだり、好きな趣味があったり、就職したり、他の人が当たり前にやっているようなことが、自分はうまくできていないように感じるのです。
私のところにくる患者さんたちにも、そういう人がたくさんいます。とくに自分の気持ちにうとくて他者感情には敏感だと、何かと他人目線を基準に考えるようになります。
たとえば、理系の大学に通っていた、とても優秀な学生の方がいたのですが、彼は突然大学をやめて、他の大学の法学部に入り直しました。その理由が、「高校時代に国語が苦手だったから、文系の学部に行って克服したい」というのです。
大学を卒業したあとは、2年間アルバイトをしたのち、2〜3年おきに転職を繰り返します。やはり、「自分の苦手なことを克服できそうな仕事がいい」ということで、コミュニケーションを重視する仕事を転々とし、気がつけば35歳を過ぎていました。
彼は、あがり症で赤面症、子どものころから音読が苦手、どもりがちという悩みがあったそうです。
そして私のところへ来て「自分にしっくりくる仕事が見つからない。このままじゃ彼女もできないし、どうしたらいいんでしょうか」というのです。