受賞作「Bateau l'avoir(バトー・ラヴォワール)」とさかもと未明さん。ヴェルニサージュ(オープニングパーティー)会場で。撮影は、ジンガロのオフィシャルカメラマンでもあるアントワーヌ・プぺル氏
アーティストのさかもと未明さんが、フランスの新進アーティストの登竜門で100年以上続く国際展覧会「サロン・ドトーヌ2021」に「Bateau l'avoir(バトー・ラヴォワール)」という作品で入選しました。「サロン・ドトーヌ(秋の展覧会)」は、「ル・サロン」というフランスの保守的な官展に落選し続けたセザンヌやマチス、ルオーなど、その後世界的な巨匠となった画家たちが「ル・サロン」に対抗して作った展覧会。100年以上の歴史を持ち、フォービズムや、ピカソを中心とするキュビズムなど、その後の現代芸術を牽引する才能を輩出し、日本人では藤田嗣治やヒロ・ヤマガタらが入選しています。今回の受賞の喜び、創作に至った経緯などを、パリで行われた展覧会の写真とともに寄せていただきました

――漫画家として活動していたさかもとさんは、2006年に難病である膠原病に罹患、一度は余命宣告を受けるまで悪化し、2010~16年はほとんどの活動を休止。しかし、2015年に川島なお美さんら親友の女性3人をがんで亡くし、動かない手で創作活動を開始しました。精力的に作品を作り上げるなか、コロナで予定されていたラスベガスとパリでの個展が中止になったこともあり、欧州美術クラブの「第21回 日本・フランス現代美術世界展」の作品公募の広告をネットで見つけ、応募、入選を果たします。その展覧会をサロン・ドトーヌが後援していたことから、パリ本場のサロン・ドトーヌにも挑戦し、半年以上の厳しい審査期間を経て、6月中旬入選の連絡が来たといいます。

 

コロナがきっかけで応募して

展覧会に応募したきっかけは「コロナ禍」。私は2019年のホテル椿山荘での絵画展の後、パリとラスベガスでの展示が予定されていた。2つの海外展をこなすため、1冊の書下ろし以外何も仕事を入れていなかったので、コロナで予定表は真っ白に。暇にあかせてネットの情報を漫然と見ていた時、サロン・ドトーヌ関連の「日本、フランス、現代美術世界展」に応募し、入選。続けて受け取った本家フランスの「サロン・ドトーヌ」公募の案内を見て、応募を決めた。

応募の審査は厳しく、きちんとした写真を締め切りまでに納品し、そのあとは一切の加筆は許されない。落選すれば展示はできずに終わり、万一入選したら、連絡が着次第フランスに作品を送ることになる。半ば諦めていた時に「入選」の審査結果が郵送された。嬉しくて、ポストの前で何度もその用紙の文字を見直した。

手の痛みをこらえて作品に向き合う未明さん(撮影◎木村智)