「今でこそ仕事を楽しめるようになりましたが、この世界に入ってしばらくは、人に見られることが苦手でした。『こんな演技ではダメだ』と、自分を責めて落ち込みがちで」(撮影=鍋島徳恭)
現在発売中の『婦人公論』12月14日号の表紙は女優の木村多江さんです。芸能界に入ってしばらくは、人に見られることが苦手だったという木村さん。仕事を楽しめるようになるきっかけとなった、ある出来事とは――。発売中の『婦人公論』から記事を掲載します。(撮影=鍋島徳恭 構成=篠藤ゆり)

「人を楽しませる」という原点に戻って

小学生の頃から、人を楽しませること、喜んでもらうことが好きでした。長く入院生活を送る叔母に笑ってもらいたくて、弟と漫才を披露したことがあって。そうしたら、看病している祖母や母も笑顔になったのが嬉しくて──。

現在、ドラマ『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』に出演中です。お笑いコンビ阿佐ヶ谷姉妹のお姉さんの江里子さんを私が、妹の美穂さんを安藤玉恵さんが演じています。ネタあり歌ありで大変ですが、人を楽しませることが私の原点。間の取り方など、楽しみながら演じています。

今でこそ仕事を楽しめるようになりましたが、この世界に入ってしばらくは、人に見られることが苦手でした。「こんな演技ではダメだ」と、自分を責めて落ち込みがちで。人とコミュニケーションを取るのも得意ではなく、相手を傷つけたのではないかとくよくよしたり……。

ところが、自分では失敗したと思っていたシーンを褒めていただくこともあり──あまり自分で決めつけないほうがいいと気づいたのです。30歳を過ぎたくらいから、徐々に心に余裕が生まれてきました。