最後の「多事総論」

筑紫 ニュースというのは「これが初めて」を強調したがるものですが、18年半前にこの番組が始まる時、プロデューサーは記者会見で番組について「二つの史上初がある」と強調しました。一つは「ニュース番組に個人の名前がついたのが、この国では初めてだ」。もう一つは「その私がキャスターだけでなくて編集長を兼ねている」と言いました。

「筑紫哲也 「NEWS23」とその時代」(著:金平茂紀/講談社)

来週からの番組リニューアルで、番組名から私の名前が消えます。そして私は編集長でもなくなります。そういう場合、普通は18年半を振り返って大特集をやるとか、この番組のために生まれた名曲「最後のニュース」を井上陽水さんに唄ってもらうとか、ひと騒ぎするものであります。しかし、それをやりません。スタジオでの花束贈呈もありません。

なぜかといえば、番組が終わるわけでもなく、私がいなくなるわけでもないからです。私は体力の許す範囲、そして番組にとってプラスになると思える範囲で、これからもこの番組にかかわっていきます。

そんなことより変わらないのは、長い間みなさんの支持によってつくられたこの番組のありようです。それを私たちは「NEWS23のDNA」と呼んできました。

力の強いもの、大きな権力に対する監視の役を果たそうとすること。とかく一つの方向に流れやすいこの国で、あ、この傾向はテレビの影響が大きいんですけれど、少数派であることを恐れないこと。多様な意見や立場を登場させることで、この社会に自由の気風を保つこと。

それを、すべてまっとうできたとは言いません。しかし、そういう意思を持つ番組であろうとは努めてまいりました。これからも、その松明(たいまつ)は受け継がれていきます。

この18年の間、どうして番組が生き残れたのかと、改めて考えてみました。いちばんの理由は、ご覧いただいている皆さまからの信頼感という支えが大きかったと思います。どうぞこれからも変わらず、NEWS23をよろしくお願いいたします。