女優の小林聡美さん、俳人の宇多喜代子さん、イラストレーターの南伸坊さん。個性的な顔ぶれで句会を開催!季語の選び方から句会の楽しみ方まで、三者三様の俳句愛があふれています。リニューアル1号目となる『婦人公論』2月号から、特別に記事を先行公開いたします。今回は後編をお送りします(構成=篠藤ゆり 撮影=大河内禎)
森羅万象を短い言葉で表現する
宇多 隠語みたいな季語もありますね。たとえば「雁風呂(がんぶろ)」。雁が渡ってくる時に木の枝を咥えていて、疲れたら波の上に浮かべて休む。それを浜辺に置いておいて、日本を去る時に、また持っていく。
すると日本で死んだり食べられた雁の分は、浜辺に残るわけです。それを集めて供養して、お風呂をたいた。もちろんファンタジーだけど、面白いじゃない。「蚯蚓(みみず)鳴く」は秋の季語。ミミズは鳴かないけど、その声が聞こえるくらい静かってこと。
小林 「蛙(かわず)の目借時(めかりどき)」という季語も面白い。春、ついうとうとしてしまうのは、カエルが人の目を借りてるからだ、とか。
宇多 不思議な言葉よね。身の回りの小さな生き物も、言葉のおもちゃになるし、季語は森羅万象を表せる。それが載っているのが、「俳句歳時記」。
小林 初めて手にした時は面白かったけど、同時に、「わぁ~、すべてが季語なんだ」と思うと、ちょっと息苦しくもあり。(笑)
宇多 歳時記のいいところは、ページを開くと、同じページに他の季語もある。それも見なさいと、昔から言われています。
南 歳時記って、でもちょっとムズカしくなってる気もしますね。いつも使ってるコトバでつくったほうが実感が出せる。
宇多 それでいいのよ。「こうじゃなきゃいけない」と縛られるのは、つまらないと思います。