机に鉛筆が転がっている光景からも、何か生まれる
小林 私は、なんといっても句会が楽しいですね。ワクワクするし、緊張するし、自分の俳句を披露するのはちょっと恥ずかしいけれど、どこかヤケクソ的に吹っ切る面白さもあって。みんなの句についてワイワイ話すのも楽しいです。
宇多 つくった本人が思いもよらぬ解釈をする人がいたりして。
小林 本人もびっくり。それが面白い。
南 自分が楽しむのが一番だけど、仲間がいたらもっと楽しくなりますよね。
宇多 でも、新型コロナで一時、句会も吟行も難しくなったでしょう。それで私、皆さんに「おうち吟行をしましょう」と声をかけたの。家の中や、家を出て10メートル圏内で一人吟行をしてごらんなさいって。
南 そういえば昔、僕の先生の赤瀬川原平さんが「自宅で出来るルポ」っていうのを連載したことがある。ぜんぶ近所ですましちゃうんです。
宇多 「机上の吟行」もいいわよ。机に鉛筆が転がっている光景からも、何か生まれる。私がいつも言っているのは、俳句を始めると「あいにく」と「退屈」がなくなるということ。雨が降っても「あいにく雨」とは感じないし、風が強くても「あいにく風」とは思わない。すべてを楽しめるんですね。だから退屈知らずになる。
南 いいなァー。「あいにく」と「退屈」がない。
小林 ほんと、そうですよね。お風呂の中でも退屈しない。