イラスト:小林マキ
多くの女性が悩まされる、体の「冷え」。体質だから仕方ないと放置していると、全身の不調を招くこともあるといいますから、油断は禁物です。上手に解消する方法を、せたがや内科・神経内科クリニック院長の久手堅司先生に聞きました(イラスト/小林マキ 取材・文・構成/岩田正恵《インパクト》 デザイン/米山和子《プッシュ》)

脊椎のゆがみが自律神経の働きを妨げる

寒い季節になると、特につらく感じる体の冷え。靴下を重ねばきしたり、温かい飲み物をんだりしても、なかなか改善せずに悩んでいる人も多いのでは。

「50代以降の女性は、熱を生み出す筋肉の衰えや、ホルモンバランスの変化などが重なり、冷えやすくなっています。さらに私が注目しているのが、脊椎のゆがみによる冷えです」と話すのは、せたがや内科・神経内科クリニック院長の久手堅司先生。脊椎のゆがみと冷えについてこう説明します。

「脳から出た自律神経は、脊椎のトンネルの中を通り全身につながっています。脊椎がゆがむと自律神経が圧迫され、正常に働きづらくなり、冷えの原因になってしまうのです」(久手堅先生。以下同)

脊椎のゆがみを招く要因となるのが、家事やスマホ・パソコンの使用、デスクワークなどの前かがみになる姿勢だと指摘します。

「前かがみになると、重い頭部を支えるために首・肩・脊椎に荷重がかかり、脊椎のバランスが崩れてしまうことに。一時的であれば、それほど深刻な影響はありませんが、これが長時続くと脊椎のゆがみが慢性化してしまうのです」加えて、脊椎がゆがむことで肺が圧されて、呼吸が浅く、速くなることも冷えにつながるそう。

「自律神経には、活動的なときに働く交感神経と、リラックスしているときに働く副交感神経があり、浅く、速い呼吸は、交感神経を優位にします。交感神経が優位になると、末梢血管が収縮。熱の運搬役である血液が届かなくなるため、手足の先が冷えるのです」

冷えを自覚するのは、主に手足など体の末端ですが、こうした部分的な冷えを放置すると、手足全体、体の内側へと広がり、内臓まで冷えてしまうのだとか。

「免疫細胞の70%が集まる腸が冷えると大変です。もともと腸は、交感神経が優位なときは働きが抑えられているのですが、冷えるとさらに血管が収縮して血流量が減少。消化、吸収、排せつといった働きが鈍くなり、腸内環境が悪化するのです。腸の不調は、免疫力の低下に直結しますから、あらゆる病気への抵抗力が奪われることになります」

そのほか、疲れやだるさ、頭痛やうつ病など、冷えを放置するとさまざまな不調を招く恐れがあるとのこと。こじらせてしまう前に、しっかり解消しておきたいところです。