別居は水くさくなりますね

ただ、大きな変化がひとつありました。別居です。実は6年ほど前、離婚しようと思ったんです。子どもたちも、「いいよ」と言ってくれました。2人ともすでに独立して、もう「おっちゃん」の年齢ですからね。

弁護士に相談するくらい本気だったんですけど、いざとなるといろいろ《邪魔くさく》なってしまって。45年近く一緒にいますと、名義変更とか、財産の振り分けが大変なんです。ほとんど私のものですけど(笑)、別れるとなったらちゃんと分けないと。夫が離婚後に野垂れ死にしたとなったら嫌ですから。結局、離婚ではなく、私が持っていたマンションに移ってもらうことにしました。

うちに帰ってくるのは週末です。その日は食事も作ってますよ。この間も久しぶりにてんぷらを揚げました。「美味しい」とも言いませんが、何か嬉しそうに食べてました。

ただ、別居は水くさくなりますね。日頃の様子を全部見ているわけではないので、細かな体調の変化などはわかりません。一方で、40年間言わなかった「ありがとう」を私に言うようになりました。日曜日の朝、ごはんを作ると「ああ、どうもありがとう」「ごちそうさま」と言って出て行きます。今まで言わなかったことを、別居と年月と水くささが言わせるんだなと思います。

今はものすごくいい距離感です。家から車で10分という距離もさることながら、週に1、2度帰ってきて、食事をしてマンションに戻っていく。そのペースが今の私たちにはちょうどいい。相変わらず、掃除ひとつしませんが、汚れたらお掃除の業者に入ってもらえばいい。「たまに会う」というのは生活の知恵ですね。私のストレスはぐんと減りました。