天岩戸に閉じこもったアマテラスオオミカミの興味をひくべく、舞い踊る天鈿女命。「家庭教育日本歴史」(編:武田仰天子 、尚美堂)より。出典:国立国会図書館デジタルコレクション
英雄は勇ましく猛々しい……ってホンマ? 日本の英雄は、しばしば伝説のなかに美少年として描かれる。ヤマトタケルや牛若丸、女装姿で敵を翻弄する物語を人びとは愛し、語り継いできた。そこに見た日本人の精神性を『京都ぎらい』『美人論』の井上章一さんが解き明かす本連載。第13回は「顕現するアマテラス」。

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最高神だが人前に顔をださなかったアマテラスオオミカミ

アマテラスオオミカミは、記紀神話の最高神である。太陽神であり、皇室の祖先神として位置づけられてきた。

神々の活躍をしるす古い記録では、主役の座をあたえられている。『古事記』の「上つ巻」や『日本書紀』の「神代(かみよ)」は、彼女をヒロインとしてあつかった。ただ、人の世がはじまってからの記述に、あまりその出番はない。神武天皇の登場以後は、表舞台で躍動する場面がなくなっている。

とはいえ、さすがに神話の最高神である。神代の話がおわったそのあとでも、アマテラスは人界との接点をたもっている。じっさい、『古事記』の「中つ巻」には二箇所、女神の健在ぶりをしめすところがある。

直接、人前に顔をだしてはいない。そのあらわれかたは、やや消極的である。夢をつうじて、人びとに指針をあたえる。あるいは、神懸りとなった人物の口をかりて、指図をする。そんな形で、天上界から人びとをみちびくに、とどまった。

また、アマテラスが助言をあたえたのは、皇統とつながる人びとにかぎられる。一般の人民には、そういうことをしていない。しかも、アドバイスをもらったのは、神武天皇と神功皇后のふたりだけであった。