100歳まで、私はまだ30年書ける
林 そういうところが私、素晴らしいな、素敵だなぁと思うんですよ。だから、多くの若い作家が先生を慕って寂庵を訪ねてきます。江國香織さん、角田光代さん、三浦しをんさん……、みんな先生を尊敬しています。先生が切り拓いてくださった道こそ、私たち女性作家が歩む道です。
瀬戸内 私にそんな力はないですよ。若い人たちの小説を読むと、本当に上手くて、私はもう古いなと思う。時代は変わってきています。
林 確かに若い人たちは上手いです。
瀬戸内 世の中に出ることができるのも、書き続けられるのも、その人の才能です。それは生まれつきですから、親に感謝しなくては。
林 私は怠け者ですが、不思議と書くことだけは続けられました。
瀬戸内 これだけ続けば怠け者とは言えませんよ。しかも、書くものすべて売れるんですから。
林 いえいえ、売れていませんよ……。加えて先生のすごいところは、いつだって書斎の中に閉じこもっていなかったこと。湾岸戦争の停戦を訴えてハンストしたり、震災時には被災地に飛んで行ったり、いつも行動していました。
瀬戸内 そんなに立派な人間ではないのですけど、まあ、これは行かないといけないと思えば、やはり現地に赴きましたし、その経験を書いてきました。
林 100歳まで、私はまだ30年書けると思うと、嬉しいです。
瀬戸内 あなたには才能がある。もう書くことはない、終わったと思っても、またいくらでも湧いて出てくるから心配することはありません。