瀬戸内寂聴さん(左)と林真理子さん(右)【撮影:霜越春樹】
2021年11月9日、作家で僧侶の瀬戸内寂聴さんが逝去されました。享年99。親交の深い林真理子さんが京都・嵯峨野の寂庵を訪ねたのは、半年ほど前の6月のこと。2022年5月には100歳のお誕生日を迎えるはずだった瀬戸内さんにとって、最後の対談となりました。「私のことを書いて」と託した林さんと最後に交わした約束とは――(2021年6月30日に収録)【撮影=霜越春樹】

<前編よりつづく

死ぬことは怖くない

 先生は、死についてはどのようにお考えですか。

瀬戸内 仏教者ですから、死んだらどうなるかということを答えられなくてはいけないのでしょうけれど、こればかりはわかりません。でも、死ぬことは怖くないんです。

 あちらで会いたい方はいますか? かつての恋人とか。

瀬戸内 いや、死んでまで会いたいとは思わない。だって、100歳にもなるこのよぼよぼの姿で会いたくないわ。私の若い頃の面影を持ったままでいてくれたらいい。

 一所懸命愛して、悔いがないからでしょうか?

瀬戸内 悔いはいくらでもありますよ。相手にひどいことをしてしまった、もっと違う方法があったんじゃないかって。でもね、済んだことを今さら嘆いてもしかたありません。相手が死んで、こちらも死んだら、幕引きだと思います。