「先生の本は全部読んでいるので知っているつもりですけど、まだ知らないこと、ぜひお聞きして書きたいです」

寂聴訳『源氏物語』から『奇縁まんだら』まで

 実家に、真っ赤な装幀の『瀬戸内寂聴全集』があって、母も読んでいました。日本文学の金字塔です。

瀬戸内 まだ全集に入っていない分が、新たに刊行されて完全になる予定なんですよ。

 わあ、すごい。全集を出して売れるような作家は、今の時代には先生以外もういません。

瀬戸内 私が書いたもので、死んだ後も読まれるのは現代語訳『源氏物語』でしょう。そして『美は乱調にあり』『かの子撩乱』『青鞜』などの伝記小説。それから、亡くなった作家たちのことを書いた随想集『奇縁まんだら』ね。

 『奇縁まんだら』は、川端康成、三島由紀夫、谷崎潤一郎など、先生が実際にお会いになった作家のことを書いていて、実に面白い。荒畑寒村さんは、美男子だったって。

瀬戸内 寒村先生は、いくつになっても恋愛していた。70代で「この恋はつらい。セックスが伴いません」と私の前で泣くんです。その年で泣くほどの恋をするなんて、素敵じゃない。