林 先生だって出家していなかったら……あれ以来、恋をしていないのですか?
瀬戸内 私は本当に何もないですよ。男に飽き飽きして出家したんだから。
林 飽き飽きするほど。(笑)
瀬戸内 真理子さんこそ、単純な私と違って隠していることがたくさんあるんじゃないの?
林 ありませんけど(笑)、今度二人きりの時にいろいろお話ししましょう。私も、まだ誰も知らない瀬戸内寂聴を知りたいです。先生はご自身のことをたくさんお書きになったけど、誰か作家が先生のことを調べて書くのは嫌ですか?
瀬戸内 真理子さんが書いてくださいよ。
林 私ですか? 本当にいいんですか? 先生の本は全部読んでいるので知っているつもりですけど、まだ知らないこと、ぜひお聞きして書きたいです。『婦人公論』で連載しましょう!
瀬戸内 そうね、『婦人公論』で、すぐに始めましょう。
瀬戸内寂聴
作家、僧侶
1922年徳島県生まれ。63年『夏の終り』で女流文学賞受賞。73年に得度し、法名寂聴となる。92年『花に問え』で谷崎潤一郎賞、96年『白道』で芸術選奨文部大臣賞、2001年『場所』で野間文芸賞を受賞。06年、文化勲章受章。著書に『美は乱調にあり』『かの子撩乱』『奇縁まんだら』『風景』『求愛』『いのち』など。21年11月9日に永眠、享年99
林真理子
作家
1954年山梨県生まれ。日本大学藝術学部卒業後、コピーライターとして活躍。86年「最終便に間に合えば」「京都まで」で第94回直木賞を受賞。『白蓮れんれん』で柴田錬三郎賞、『みんなの秘密』で吉川英治文学賞を受賞。2020年には日本文藝家協会の理事長に女性として初めて選出された。『西郷どん!』は18年のNHK大河ドラマ原作になった。同年紫綬褒章受章。20年には週刊文春での連載エッセイが「同一雑誌におけるエッセーの最多掲載回数」としてギネス世界記録に認定。同年第68回菊池寛賞受賞。22年7月に日本大学理事長に就任。『私はスカーレット』『四十雀、跳べ!』なと著書多数
公式ブログ