瀬戸内寂聴さん(撮影:本社写真部)
『夏の終り』や現代語訳『源氏物語』などを著した作家・瀬戸内寂聴さんが11月9日、心不全のために亡くなられました。享年99。公私ともにお付き合いのあった作家・林真理子さんに瀬戸内さんとの思い出を伺いました。

「私におごってくれるのは真理子さんだけ」

「さびしい……本当にさびしいですね。可愛がってくれた先輩がまた一人いなくなってしまいました」

大作家の訃報から一夜明け、林真理子さんは悲しみをにじませながら何度もそうつぶやいた。

瀬戸内さんと林さんの出会いは30年以上前のこと。

「たしか雑誌の対談だったと思います。大先輩ですからね、最初はびびりますよ。でも、怖くはなかった。先生の作品をたくさん読んでいましたから。その後、目をかけてくださったのは、私が『本屋の娘』だということがあるのでしょうね。好きというだけではなくて、毎日先生の作品が陳列されている本棚にはたきをかけていたわ……という一種独特の『近さ』があったのかもしれない」

その後、何度も食事を共にしてきたという。瀬戸内さんが上京した際には、林さんおすすめのレストランに案内したこともある。

「寂聴先生は〈私におごってくれるのは真理子さんだけだわ〉って、よく笑っていらっしゃいましたね」