作家としても個人としても、あれほど幸せな人はいない
訃報が流れてからというもの、多くの人が瀬戸内さんとの思い出を語っている。そして林さんは瀬戸内さんを「あんな幸せな人はいない」と言う。
「いつもまわりにたくさん人がいて。死ぬまで現役で、編集者にも尊敬されて。孫のように可愛がっていた(秘書の瀬尾)まなほさんもいたし、そのお子さんもなついていました。さらに、お嬢さんとも和解して、今は交流していらっしゃる。『捨てた娘だから、頭が上がらないの』なんておっしゃっていたけれど。作家としても個人としてもあれほど幸せな人はいないです」
瀬戸内さんは、2021年1月の『婦人公論』のインタビューで、以下のように語っていた(「今年99歳。夜中に転倒し入院しても、いまだ書ける喜び」)。
〈人の運命というのは、どう動くかわかりません。人生の総決算は、死ぬ瞬間にしかできないのではないでしょうか〉
瀬戸内寂聴
作家、僧侶
1922年徳島県生まれ。63年『夏の終り』で女流文学賞受賞。73年に得度し、法名寂聴となる。92年『花に問え』で谷崎潤一郎賞、96年『白道』で芸術選奨文部大臣賞、2001年『場所』で野間文芸賞を受賞。06年、文化勲章受章。著書に『美は乱調にあり』『かの子撩乱』『奇縁まんだら』『風景』『求愛』『いのち』など。21年11月9日に永眠、享年99
林真理子
作家
1954年山梨県生まれ。日本大学藝術学部卒業後、コピーライターとして活躍。86年「最終便に間に合えば」「京都まで」で第94回直木賞を受賞。『白蓮れんれん』で柴田錬三郎賞、『みんなの秘密』で吉川英治文学賞を受賞。2020年には日本文藝家協会の理事長に女性として初めて選出された。『西郷どん!』は18年のNHK大河ドラマ原作になった。同年紫綬褒章受章。20年には週刊文春での連載エッセイが「同一雑誌におけるエッセーの最多掲載回数」としてギネス世界記録に認定。同年第68回菊池寛賞受賞。22年7月に日本大学理事長に就任。『私はスカーレット』『四十雀、跳べ!』なと著書多数
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