15歳の時の体験がライターとしての原点
学校に普通に通って、何気なく授業を受けて。友達とたまに遊んだりして。そんな日常は手からすり抜けていった。でも、今、この瞬間。私の言葉だけは、誰にも奪えない。
会場に戻ると、先生が興奮気味に駆け寄ってきた。
「あなたにあんなに表現力があったなんて」
この時の経験が、私に言葉で表現することの喜びを刻み付けてくれた。
その後も、言葉で表現する機会に恵まれた。
家にお金がなく、部活やサークルに入れなかった私の唯一の青春が、高校や大学で出場したプレゼン大会だった。
言葉で表現する瞬間が、一番好きだ、と感じるようになった。
「あんた、舞台に立つと人が変わるよね」
「なんか乗り移ってるみたい。別人になるよね」
親しい友達にはいつもそう言われていた。
話し始めると体中の細胞が沸き立って、躍動する。
その時だけは、うまく呼吸ができる。自分が自分でいられる時間だった。
でも、その時はまさかそれを仕事にする時が来るなどと、思ってもみなかった。
これは学生の時の、一時の特殊な機会であって、仕事とは別、と思っていた。
でも最近、講演に呼んでもらい、まるで学生の頃のようにパワーポイントを使って、自分の体験を話す機会があった。自分でもこんな日が来るとは思わなかった。
ライターになった今、15歳の時の体験は、やはり自分の原点だと感じる。
どれだけ苦しく、悔しいことも、言葉にすることで、新たに見える景色、生まれる感情がある。体験を共有することで、つらいだけ、のことも、そうではなくなるのだ。
私にとって、言葉で表現すること、それはすなわち生きることだ。