「ずっと自分と向き合ってきたからわかるんですよ。『すべて出し切ったな』って。もう、ない」

親父の年齢を超えて

9月24日で87歳になりました。来年は米寿だって。なんだか笑っちゃうね。親父が生きた年齢も超えたことになりますが、これほどまでに多忙な80代を送ることになるとは考えていなかった。あんまり忙しいので、今年8月、13年間にわたって続けてきたブログをやめました。

もはや長篇小説は書きません。81歳で『モナドの領域』を発表したときに「わが最高傑作にして、おそらくは最後の長篇」と公言しましたから。それどころか短篇からも卒業する、と関係者に伝えています。今後は文芸誌に原稿用紙10枚くらいの掌篇を寄せていくつもりです。それがある程度まとまれば、最後の作品集ということになるでしょう。

体力や気力の問題ではなく、長い年月をかけて自分の中に培ってきた知識や発想のストックを使い果たしてしまった。ずっと自分と向き合ってきたからわかるんですよ。「すべて出し切ったな」って。もう、ない。

でも寂しくはありません。こうして忙しい、忙しいと文句を言っているくらいなんですから。つまり、もう十分にやってきたじゃないかという気持ちのほうが強い。まだ書きたいことがあるのに志半ばで中断するなんてのは悔しいですが、出し切ったと言えるのは幸いなんです。

『婦人公論』11月9日号に掲載された、上記記事に加えて、筒井さんの日常生活や健康法、死生観、家族への思いなども語ったロングインタビューはこちら