「紙が私の絵具なんだわ、と考えて。空いた時間にまた、貼り絵の作品に取り組むようになりました」(撮影:大河内禎)
〈3月15日発売の『婦人公論』4月号から記事を先出し!〉
記事や広告の絵柄で絶妙に世相を反映した新聞バッグ。折り込みチラシに印刷されたあらゆる写真を切り抜き、貼り付けて表現された巨大なコラージュ。そのユニークさ、緻密さに圧倒される人が続出し、今、突如注目を集めている嶋暎子さん。2022年4月10日まで東京都渋谷公園通りギャラリーで開催している「Museum of Mom's Artニッポン国おかんアート村」に作品が飾られている。嶋さんが制作を始めたきっかけは――(撮影=大河内禎 取材・文=山田真理)

たった5日の個展からブレイク

東京・渋谷公園通りギャラリーの吹き抜けの空間に並ぶ、100号(縦162cm)を超す巨大なキャンバス。そこに浮かび上がるのは、架空の都市、皿の上の料理、マグノリアの花だ。

近づいて目を凝らせば、それが新聞のチラシから切り抜いた住宅や家具、宝石、食料品の小さな画像を貼り合わせたものだとわかるだろう。台に並ぶ新聞バッグは、紙面を巧みに生かしたデザイン、チラシを筒状にして作ったおしゃれな持ち手。商品タグまで世界で一つのコラージュ作品という完成度の高さに目を奪われる。

作者の嶋暎子さんは、現在80歳。これまでほとんど世に知られていなかった。今回このような大きな会場で展示されるようになったきっかけは、2021年10月に自宅近くの区民ギャラリーで自ら開いた個展だ。会期はわずか5日間。しかしその作品に驚いた来場者が、「なにこれすごい!」「写真に撮っていいですか」とSNSで次々と発信し始めたのだ。

「僕も知人の投稿で妙に気になったんですよ。それで区民ギャラリーへ行ってみたら、まずコラージュの迫力に圧倒された。チラシや新聞を使うことで生まれる時代性、緻密なものづくりの姿勢もすごいと思ったんです」と語るのは、作家で編集者・写真家の都築響一さんだ。

新聞バッグは、表面に見せたい絵柄がうまく配置されるよう工夫して折るのが嶋さんの技。手作りのタグも、チラシの切り抜きコラージュ。じっくり見ると、絵柄と絶妙にリンクしているのが面白い