左右の壁の巨大な作品と、その下および写真中央の新聞バッグが嶋さんの作品。現在、東京都渋谷公園通りギャラリーで開催中の「Museum of Mom’s Art ニッポン国おかんアート村」の特別展示「おかん宇宙のはぐれ星」で見ることができる。右壁の連作コラージュの作品名は左から「万華鏡 No.2、No.3、No.4、No.5」

都築さんは渋谷公園通りギャラリーで現在開催中の展覧会、「ニッポン国おかんアート村」に、共同キュレーターとして参加している。そこで嶋さんの作品を紹介したいと考えた都築さんは、「1週間遅かったら間に合わなかった」というぎりぎりのタイミングで展示の構成を大幅に変更。

特別展示された嶋さんのコラージュと新聞バッグは展覧会のオープン直後から来場者の驚きと感動を呼び、美術系のネットメディアなどでも取り上げられるようになった。

作品名「マグノリア」。マグノリアの花の形をした架空の都市を描いた。立ち並ぶマンションや家は広告から切り抜いたもの
●A:マンションの切り抜き写真のコラージュをよく見ると、寝具や寝ている女性の姿が
●B:花の中央には、花々の切り抜きと、白いシャツを着て並ぶ女性たちの姿が

 

「紙が私の絵の具なんだわ」

1942年に東京・目黒で生まれた嶋さん。幼い頃から絵が好きで、高校時代には独学で貼り絵の作品を作り始める。ただ家庭の事情もあって美術大学に進むことはできず、卒業後は大手企業でキーパンチャーの仕事に就く。

「でもやっぱり絵が好きだから、会社帰りにデザインやレタリングが学べる学校に通いました。それで22歳で広告会社へ転職して、27歳のときに結婚し、28歳で長女を出産するまで、デザイナーとして働いたんです」

会社員時代は美術部に所属して油絵に挑戦したこともあったそうだが、画材が高価なこともあり、「紙が私の絵具なんだわ、と考えて。空いた時間にまた、貼り絵の作品に取り組むようになりました」。