都築さんは渋谷公園通りギャラリーで現在開催中の展覧会、「ニッポン国おかんアート村」に、共同キュレーターとして参加している。そこで嶋さんの作品を紹介したいと考えた都築さんは、「1週間遅かったら間に合わなかった」というぎりぎりのタイミングで展示の構成を大幅に変更。
特別展示された嶋さんのコラージュと新聞バッグは展覧会のオープン直後から来場者の驚きと感動を呼び、美術系のネットメディアなどでも取り上げられるようになった。
「紙が私の絵の具なんだわ」
1942年に東京・目黒で生まれた嶋さん。幼い頃から絵が好きで、高校時代には独学で貼り絵の作品を作り始める。ただ家庭の事情もあって美術大学に進むことはできず、卒業後は大手企業でキーパンチャーの仕事に就く。
「でもやっぱり絵が好きだから、会社帰りにデザインやレタリングが学べる学校に通いました。それで22歳で広告会社へ転職して、27歳のときに結婚し、28歳で長女を出産するまで、デザイナーとして働いたんです」
会社員時代は美術部に所属して油絵に挑戦したこともあったそうだが、画材が高価なこともあり、「紙が私の絵具なんだわ、と考えて。空いた時間にまた、貼り絵の作品に取り組むようになりました」。