『婦人公論』4月号の表紙に登場した寺島しのぶさんと富司純子さん

完璧な母を見て学んだこと

寺島 歌舞伎役者の妻と母親の務めを完璧にこなしてきた母さんは、本当にすごいと思う。弟も立派な歌舞伎役者に育てあげたわけだから。子どもの頃は、学校行事にもよく参加してくれた。私のハンドボール部の試合がある時は、鶏の照り焼きを友だちの分までお重につめて持ってきてくれたり。

富司 そうそう、評判が良かったのよね(笑)。あなたは完璧と言ってくれるけど、お義母さまや母、ママ友をはじめ、周囲の人たちのサポートがなかったらできなかったことよ。

寺島 それでも真似できない。私はすぐにとっちらかってしまうもの。何でも子ども中心に考えて、自分の仕事を断ろうとしたこともあるし。その時はローランから、「自分は自分、息子は息子。君のキャリアを制御するなんてナンセンスだ」と言われてハッとした。

愛犬のノアくんを抱きしめる眞秀くん(寺島さんHPより)

富司 そもそも、私とあなたは性格が正反対だから。私は細かいことまで考える性格で、あなたはお父さん譲りの、小さなことにとらわれない性格。実は繊細なのだけれど、それを表に見せない器の大きさがある。

寺島 たしかに違うね。だから今は、なるべく母さんと比べないようにしてる。「私は私」と割り切って。