人生は寄って見れば悲劇だが、引いて見れば喜劇だ
今では母の認知症を「贈り物」と形容する私も、決して最初からそのように思えていたわけではありません。大好きな母が壊れてゆくのを見るのは怖く、悲しく、目を背けたくもなりました。
でも気づいたのです。いくら目を背けたところで現実は変わらない。ならば潔く受け止めて、その上で少しでも前向きに、楽しく生きる方法を工夫した方が得じゃないかと。これは、長く暗いトンネルを抜けてつかみ取った、生きるコツのようなものです。
そう、贈り物という考え方は自然と生まれてきたものではありません。落ち込んでばかりじゃ損だと思ったから、必死で「よかったこと」を探したのです。無理やりにでもいいから、前向きに考えよう。それで楽になるのなら……。藁をもつかむ思いでした。
「人生は寄って見れば悲劇だが、引いて見れば喜劇だ」
私が大好きな、喜劇王チャップリンの言葉です。同じ出来事でも、間近で見ると感情移入しすぎて深刻になってしまうけれど、遠くから傍観者的に見ればクスリと笑えることもある。うちもまさにそうでした。